特別紹介 防衛省の秘蔵映像(42) いささかだれ気味(?)の広報動画  2005(平成17)年の映像紹介

 2005(平成17)年の映像紹介
平成17年防衛庁記録 – YouTube

はじめに・中露の示威

 第2次岸田政権が生まれ、林芳正氏が外務大臣になりました。もともと、日中の友好に努める議員連盟の方だそうですが、やはり中国に忖度される方なのでしょう。もちろん、政治家の方々の高邁な見識など、わたしのような庶民はうかがい知ることもできませんが、きちんと抗議し、相手の真意を引きだし、こちらの要求を通したのでしょうか。
 だいたい外務省というのは古い言葉ですが、伏魔殿(ふくまでん)のようなイメージがあります。何をされているのかよく分かりません。なんだか分からないけれど、何か魔物が潜んでいるような気がします。チャイナ・スクールとかいう中国留学組がいて関係を深め、有用な情報を集めるといった話も聞きますが、逆に取りこまれている人も当然いるのだろうと想像できるのです。
 中国とロシアの海軍が協力して「連合艦隊」を組み、わが国周辺で示威をする。あるいは中国の海中情報収集艦がわが国領海に入って活動する。そうした主権を侵す行動に、「遺憾砲」や「懸念砲」しか撃たないらしいです。何の効果もありません・・・と言っては、外交問題の素人がと笑われるかも知れませんね。
 おかげで「平和」ではないか、日中の経済、友好も維持しているではないかというご意見もありましょう。そうして、東京都の一人の市長さんは在留の外国人に参政権を与えるという条例案を議会に出すそうです。何を考えているのかと無見識なわたしなどは思いますが、そうした人を首長に信任するといった人も多いのでしょう。

初歩的な校正ミス

 今回の映像紹介は、これはいささか・・・と思わされる内容がありました。国民保護の法案の内容の紹介です。Part3、「国民保護業務計画」の紹介には驚かされました。(1)の避難住民の誘導、つまり運送力が不確実な場合の運送実施、これは当然です。自治体と協力して、避難する住民を誘導し、安全な後方に下げるのは自衛隊の仕事でしょう。
 問題は(2)です。「在日米軍施設等の所在地域における住民の『非難』のための運行に関わる調整等」とありました。有事になれば、同盟国たる米軍基地、施設は当然、攻撃を受けるおそれはあります。その近くの住民は当然、避難させられるわけでしょうが、「非難」とは何でしょうか。こうしたミスがあり、見逃した責任は誰にあるのでしょう。当然、防衛庁内局の広報担当の責任でしょう。

イラン復興支援に参加したLAV

 国際平和への貢献で大きく取り上げられているのが、今回もイラク復興支援活動です。その中に、わずかですが車輌が登場します。装備品として開発された自衛隊の専用車輌です。特徴的なものをご紹介しましょう。
 まず軽装甲機動車です。内地の師団、旅団の普通科(歩兵)部隊を装甲化するために開発されて2002(平成14)年から配備が始まりました。だからイラク派遣部隊の花形ともいうべき存在でした。愛称は「ラブ」、ライト(軽)・アーマード(装甲)・ビハイクル(車輌)、L.A.V.の略称です。
 軽いといっても、大きさは全長4.4メートル、全幅2.04メートル、全高1.85メートルといって小柄ですが、重量は約4.5トンです。これより車体が大きい、高機動車が約2.55トンになります。ジープの後継であるパジェロ(正式には73式小型トラック)は約2トンですから、装甲というのはずいぶん重いものだと分かります。
 開発の狙いは戦場での機動力の向上と、戦略機動も可能ということでした。戦略機動可能とは、わかりやすく言えば大型輸送ヘリのCH47や空自輸送機C130などによる空輸ができるようにするということです。ということは、とにかく防弾鋼板を厚くするか、どこかで折り合いをつけて重量を考えるということになります。おそらくイラクに派遣ということでは、安全性の向上のために増加装甲を付けたのでしょう。そうした話が聞かれました。
 両側に4つドアがあります。ルーフには左右に開く大きなハッチがあり、そこにはMINIMI機関銃を取りつけることができ、総合火力演習などでは01(マルヒト)式軽対戦車誘導弾も隊員が発射することも見られます。
 乗員は操縦手と1名が前席に、後席には2名が乗れます。当時の小銃班はMINIMIを1挺と、84ミリ無反動砲もしくは01式軽対戦車誘導弾1筒ですから、班長搭乗車と合わせて小銃班3輌となりました。小銃小隊は3個班で成るので、小隊長車を合わせて10輌で1個小隊になります。
 装甲化されたジープですが、価格は2004年度で1輌3200万円です。無装甲の高機動車のおよそ4倍に抑えられました。この頃、調達数は年間約150輌となり、1個連隊分ずつも増えてゆきました。製作にあたったのは小松製作所ですが、近年、防衛装備品からの撤退があり、ラブの後継車輌も開発しないということになりました。

MINIMI機関銃

 小銃分隊には、小銃と同じ弾薬を使う掩護用の自動火器として軽機関銃が配備されます。陸自でも89式小銃が制式化されれば、5.56ミリの同口径の機関銃が必要となりました。それまでは、7.62ミリの64式小銃と62式機関銃の組み合わせでしたが、今度は国産ではなく外国製の導入となったのです。
 もともとはベルギーのFN社の製品で、アメリカ軍もM249として採用されています。ライセンス生産は住友重機械工業で行なわれました。重量は機関銃としては約7キログラムと軽量で、特長は給弾に3つの方法が選べるところです。
 専用の200発入りの箱型弾倉、小銃と同じ30発箱型弾倉を使うことができ、しかも金属製のリンク・ベルトによる給弾もできます。価格は約300万円であり、小銃と比べて10倍にはならないという低価格が実現されました。ちなみに89式小銃は約34万円でした。

世界平和に貢献する人道派遣

 イラクでは陸自の派遣部隊が社会資本の復旧と建設、医療支援を行ないました。空自はさまざまな物資や人員の輸送に貢献し、海自もインド洋での外国艦艇への給油支援に活動しています。海自の遠洋航海の途次、フランスに寄港したときに給油を無料でしてくれた、インド洋でのフランス艦への給油のお返しだというエピソードも楽しいです。
 パキスタンの地震災害への陸自ヘリ部隊の活動もありました。3000メートル級の高地でも起きた死者4万人もの悲劇でした。物資の輸送に、傷病者の救助に、山岳気象の中で標高1000~1300メートルの高地で活躍する陸自のヘリの映像に感動します。
 インド洋・スマトラ島沖の地震による災害にも陸自、海自、空自が出動していました。映像には海上自衛隊の輸送艦から海岸に進むLCAC、つまりエアクッション艇の姿も見えます。米国のテキストロン社製で、全長約25メートル、幅は13メートル、エンジンはガスタービンで出力約1万5000馬力、速力は40ノットです。「おおすみ」には2隻が搭載され、艦尾の開口部から出入りします。
 そうしてゴラン高原でのアンドフ活動です。現在、統合幕僚監部防衛計画副部長の白川訓通陸将補が隊長だった若い頃が映っています。
 また、この年から統合幕僚長が3自衛隊を統括・指揮し、総理大臣を直接補佐するシステムになりました。
(つづく)
(あらき・はじめ)
(令和三年(2021年)11月24日配信)